「食の安全」という事はよく言われるようになり、食に対する意識や関心は随分と高まってきたように思います。しかし、衣服など身にまとう物の質や安全性を考え、関心を持つ人はまだまだ少ないのではないでしょうか。
昔は布地を草木で染めて身にまとっていました。そして木の実やワラ灰など植物を使い洗濯をしました。いつの間にか染料は草木から化学染料に変わり、木の実やワラ灰は合成洗剤に変わってしまいました。
<衣服は大薬なり>
紀元前三世紀ごろの古代中国の儒教経典『四書五経』の中に「草木根皮これ小薬なり。鍼灸これ中薬なり。飲食衣服これ大薬なり。」とあります。衣服を身にまとうという行為は飲んだり食べたりする事と同じくらい、大切な事だと思います。皮膚は人の身体の中で最大の臓器であり、極めて重要な役割を果たしています。私たちの健康を考える時、「食」と並んで皮膚を包む「衣服」はとても重要です。食の質や安全性に関心を持つのと同じように、身にまとう衣服の質や安全性に関心を持つ事は、私たちの健康を考える上でとても大切な事なのです。『医食同源』と言われますが、『医服同源』とも言えるのではないでしょうか。
<内服と服用>
薬を飲むことを「内服」または「服用」すると言いますが、わざわざ内服と服用を分けてある事をみれば「内服」は薬草を飲んで病を癒す事で「服用」とは薬草で染めた衣をまとって病を癒す事ではなかったかと思われます。男の子には藍で染めた衣を着せました。藍には抗菌、排毒、抗紫外線、鎮静、マムシ除けなどの効果があります。そして女の子には茜で染めた衣を着せました。茜は浄血、造血、保温、細胞の活性化などの薬効があります。
また、わざと染料が落ちやすいように赤ちゃんの産着を染めてそで口をしゃぶらせる事で薬効を与えたと言われています。古の人々にとって「衣を身にまとう」という事は、寒さを防ぐだけでなく、命にかかわる切実な問題だったと思われます。
<皮膚の役割〜皮膚は最大の臓器〜>
衣服が直接ふれる皮膚は、人の体の中で最大の臓器であり、その役割はとても重要です。しかし、多くの人は皮膚が臓器だという概念をお持ちではありません。皮膚は体温調節をし、老廃物を出し、呼吸もしています。また快・不快を感じ体外の情報をキャッチするセンサーとしての役割もあります。これは受精卵の細胞分裂の時、外胚葉から脳と皮膚に分かれ、元は脳と皮膚は同じだからということです。
肌が触れ合う時、信頼のホルモン、オキシトシンが分泌され、皮膚と脳は密接につながっていると言えます。このように皮膚は免疫系、内分泌ホルモン系、自律神経系と深いかかわりがあります。合成洗剤やドライ液(石油系や塩素系の薬品)で洗った衣服を身にまとうと、皮膚からの不快な情報は脳に伝わり、ストレスとなって免疫反応や精神面にも大きく影響を及ぼします。
※皮膚に触れると脳がとてもリラックスする。
※肌が触れ合うと脳から信頼のホルモン オキシトシンが分泌される。
<皮膚からの吸収>
皮膚には異物の侵入を防ぐバリアの役割があります。しかし、化学物質の分子量が3000以下の物は皮膚のバリアを簡単に通過します。そして800以下では細胞まで入り込みます。ちなみに合成洗剤などに使用されている界面活性剤であるノニルフェノール(環境ホルモン)の分子量は200で、使用した化学物質の一部が簡単に体内に入ってしまいます。
<衣服の安全性>
衣服は命を包む大切なものです。その大切な衣服を合成洗剤やドライ液(石油系や塩素系の薬品)で洗い化学物質づけにする事は、とても危険なことです。衣服は皮膚と同じ扱いをするべきだと考えています。皮膚は人の体の中で最大の臓器です。安全な食材、顔や体を洗う物を選ぶのと同じように衣服を洗う材料も安全な物を選ぶべきだと思います。私たちの健康を考える上で、食と同じように衣服の質や安全性を考え関心を持つことは、とても重要な事だと考えます。